ハカセKの書斎

ある技術者の独り言

ファシリテーションにおける「対立」のマネージメント

 前回に引き続き、ファシリテーションにおける「さばき」に関しての図解です。
 今回は対立に議論における「対立」に注目したいと思います。対立をマネージするためには、思考プロセスのどこで対立が起こっているかを見極めるのが重要になります。図には思考のプロセスを四つに分け、対立が生じているであろうプロセス毎での対処法をまとめています。特によく起こりがりなのが、参加者の判断基準が違ったままで議論を進めているケースです。このような場合は、あるべき姿まで遡って合意点を引き出した上で、段階的に着地点を探っていくことが大切になります。会社で言うと、全社の利益を上げるためにどうすればいいか、と言う大前提に立ち返って、それぞれの部門の立場で何が重要かの議論に落とし込んでいく、などです。
 上記は合理的な理由の場合の対処法ですが、この他に感情的な理由による対立もあります。すなわち、議論を勝ち負けで考えている参加者への対処です。この場合、①議論の場に対する認識を改めさせる、②相手にマイナスのイメージを持たせないよう配慮する、の二つの方法があります。①の場合は会議を始める前にグラウンドルールについて最初に合意する、②の場合は相手にある程度の相手に共感を示す、その場では面目を潰さす別席で話をする、などの対処法があります。
 会議を円滑に進めるためにファシリテーターが考えなければならないことは沢山ありますね。

ファシリテーションにおける「さばき」

 ファシリテーションに関する書籍は多数出ていますが、議論の「さばき」について触れている書籍はそれほど多くないように思います。一方で、会議において、議論が拗れてきた時の「さばき」のテクニックはビジネスパーソンの必須スキルと言えます。

 とはいえ、この辺りを考えながら実際の会議を進行するのは相当難易度高いですよね。「さばき」についてかなりのページを割いて説明されている「ファシリテーションの教科書」から、 ポイントを抽出して図にしてみました。

 

 

米中貿易摩擦のゆくえ:予想外の中国の追い上げ

はじめに

米中貿易摩擦が激化する中、技術者目線で気になるのは、中国の半導体技術が昨今の輸出規制で弱体化するか否かです。今週の日経新聞の記事でそれを占う記事がいくつか目に留まったのでまとめてみました。一連の動きは、米国の今後の対中戦略の根本的な見直しが必要になるレベルと思われます。

半導体装置の輸入増と中国の技術進歩

2023年第3四半期、中国が半導体製造装置の輸入を大幅に増やしたことが明らかになりました。総額は約634億元(約1兆3100億円)に達し、前年同期比で93%の増加を記録しています。これは、米国の輸出規制に対する中国の明確な対抗策とも言えるでしょう。中でも半導体の微細配線形成に必要な露光機の輸入が大幅に増えています。最先端の露光機は輸出規制の影響で輸入できませんが、その一世代前の装置を多数輸入しているようです。

Huaweiの先端半導体搭載スマートフォン

今週日経新聞に掲載されたのが、Huaweiの新モデル「Mate60Pro」に関する記事です。これによると、このデバイスには、7nm世代の半導体が搭載されていることが確認されました。現在最先端の3nm世代のデバイスには及びませんが、米国の想定よりも数年早くこの世代に到達したようです。ちなみに、24年度立ち上げ予定のTSMC熊本工場のデザインルールは22~28nmでこれが現段階での日本の最先端レベルです。前述の一世代前の露光機で歩留まり度外視で製造したとの見方もありますが、Huaweiのこの動きは、米国の警戒心をさらに強めることになるでしょう。

自国部品比率の増加

「Mate60Pro」における中国製部品の使用率は金額ベースで47%に達しています。これは、3年前のモデルと比べて18ポイントの増加を示しており、中国の半導体の内製化率が高まっていることを物語っています。これは中国に対する輸出規制の効果が弱まっていることを意味しており、米国は対中国の技術戦略を根本的に見直す必要に迫られたと言えます。

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231114&ng=DGKKZO76090790T11C23A1TEB000

スーパーコンピュータのランキング変動

一方で、科学技術力の象徴とも言えるスーパーコンピュータの世界では、日本の「富岳」が最新のランキングで4位に後退し、米国の「フロンティア」が4期連続で首位を獲得しました。このランキングは、国ごとの科学技術力のバロメーターとして機能しており、今回の結果は米国の技術的優位を明確に示しています。しかし、注目すべき点は、中国がこのリストから姿を消していることです。米中摩擦の影響を受け、中国が自国のスーパーコンピュータ開発の成果を公開しない選択をした可能性があります。このことは、米中の技術競争が新たな局面を迎えていることを示唆しています。

おわりに

中国の技術革新の速度は、米中貿易摩擦の影響で一時鈍化しましたが、再び加速し始めたようです。AIなどの情報通信技術の基盤は半導体技術ですので、中国の状況変化により世界の市場構造が変わり、ビジネス戦略の見直しを促すかもしれません。今後もこの分野の動きを注視していこうと思います。

 

話し方のすべて

 大きなプレゼンの際、緊張のあまり頭ば真っ白になった経験をお持ちの方は少なくないと思います。私自身も極度の緊張状態でうまく質疑ができなくなった苦い経験が何度かあります。対策をいろいろ考えながら今では克服していますが、それがコンパクトにまとまった本を見つけましたので、その本の中の「あがらない話しかた」という章を資料化してみました。具体的に以下の7つの方策が述べられていました。
 
  1. 本番の準備をしつこいほどする
  2. 「死んでもこれだけを伝える」を決める
  3. 真の深呼吸でリラックスモードに入る
  4. パニックを回避する避難ルートを決めておく
  5. 話すペースをスローにする
  6. 言いやすい言葉からはじめ、言いにくい言葉を抜く
  7. 評価を手放す
 それを5つに絞り込み、心構えと緊急時対応の二面から整理してみました。私自身、重要なプレゼンの際には概ねこの5つはいつも意識しており、それ以降、プレゼンで失敗することはほぼ無くなりました。この中で、特に重要なのは、「to you」マインドで話す、ということでしょうか。思い起こせば、失敗した時は「自分がよく思われたい、恥をかきたくない」などと、自分の見られかたに意識が行きすぎていたと思います。
 
「プレゼンはプレゼント」。大切なマインドですね。

 

話し方すべて

話し方すべて

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申し訳ない、御社をつぶしたのは私です

◾️はじめに

 本書を購入したのは約10年前で一度読んだ後に、本棚に飾っていましたが、最近、戦略やマネージメントについて思うところがあり、再び読み直してみました。改めて読み直すと新たに気づいたことが幾つかあったのでまとめてみました。
 

◾️書籍の概要

 本書の著者は、マサチューセッツ工科大学を卒業後、大手コンサルティングファームや著名企業での経験を持つ敏腕コンサルタント。しかし、彼女は自らの経営コンサルタントとしてのアドバイスが間違っていたと公然と懺悔する。本書では、「戦略計画」や「業績管理システム」などのコンサルティング手法が実際のビジネスにどのような影響を与えているかを具体的に解説。現代の経営手法を根幹からひっくり返すような「告白」を満載した本書はコンサル業界や今のビジネス潮流に一石を投じる一冊と言えるだろう、との触れ込み。
 

◾️参考になった内容

 戦略策定とマネージメントに関して参考になった内容を以下に要約します。
<戦略策定について>
  • 戦略策定は、今後の経済状況、業界の変化、競合他社の動向、顧客のニーズを予測できることが前提となっているが、実際はそのようなケースは殆どない。
  • ドワイト・D・アイゼンハワー将軍の名言で次のものがある。「戦闘準備において、作戦そのものは役に立たないことをつねに思い知らされたが、作戦を立てる行為こそが重要だ」。ビジネスでも計画通りに進むことは稀で、大切なのは、戦略策定の過程での学びや知力の向上。これを通じて臨機応変に対応する力が身に付く。
  • ビジネスの真の成功は、業界の将来を予測することよりも、早く大きなチャンスを掴むことにある。多くの企業で戦略を策定する際、現場の従業員からの情報を十分に活用していないことが問題。現場の声や情報は、競合や市場の実情をより正確に知る手段として価値がある。
 
<マネージメントについて>
  • 優れたマネジメントの定義は複雑で色々な書籍で多数の要件が提案されている。一方で、グーグルは「優れたマネージャーの8つの習慣」として、コーチング、部分的な任せる姿勢、部下の成功への関心、生産性、コミュニケーションの重視、キャリア開発支援、明確なビジョンと戦略、専門的スキルの保有などを簡潔にまとめている。
  • グーグルのように世界で最も評価され、模範とされている企業でさえ、優秀なマネージャーの特徴を明らかにするための研究を行う必要性を感じたという事実は、ビジネスの世界で優れたマネジメントを行うのがいかに難しいかを物語っている。同時に、これまで語らられてこなかった新たなスキルは述べられていない。
  • よいリーダー(マネージャー)には、自分自身のことをよく認識し、他人に共感し、柔軟性を示すことが求められる。それはリーダーシップスキルでも、マネジメントスキルでも、ビジネススキルでもない、生きていくためのスキルである。
  • 実際のところ、万人に有効なリーダーシップの手法やモデルなどありはしない。人はそれぞれ異なるスキルや長所を持っている。大事なのは、スキルや長所を最大限に生かしつつ、訓練したり欠点を補ったり、あるいはチームをつくることによって、弱点を補うことだ。

◾️おわりに

 本書は、戦略論やリーダーシップ論を一通り学んだが何か釈然としないものを感じている方にお勧めです。ビジネスの成功のためには、現場を見て自分の頭で方策を考えること、周囲とのコミュニケーションを円滑にすること、が大切であることに改めて気づかされました。

限りある時間の使い方

時間を有効に使うことには誰しも関心があると思います。
そのために集中力を上げるスキルに目が行きがちでしたが、別の視点で書かれた本が目に留まりましたので手に取ってみました。
 
イギリスの全国紙ガーディアンの記者であるオリバー・バークマン氏による「限りある時間の使い方」という本です。
 
著者によれば、必要なのは効率を上げることではなく、その逆で、「 すべてを効率的にこなそうとするのではなく、すべてをこなそうという誘惑に打ち勝つことが必要だったのだ」ということです。
 
そのためには、物理的な面で仕事をタスクを減らすことと、精神的な面で完璧主義を捨てることが大切としています。
 
タスクを上手に減らす3つの法則として以下が挙げられました。
  • まず自分の取り分をとっておく
    これは、自分のための時間をあらかじめスケジュールに入れておこうということです。
  • 「進行中」の仕事を制限する
    まず、重要な仕事を3つまでに制限します。その上で、そのうちの1つが完了するまで他の仕事は一切やらず、マルチタスクを避けることがポイントだそうです。
  • 優先度「中」を捨てる
    優先順位が中くらいのタスクは、邪魔になるだけなので捨てる方が良いそうです。
 
この辺はよくある話だと思いましたが、それ以降の精神面での考え方が私にとって参考になりました。具体的には、完璧主義を捨て、今を生きることです。
 
まず、完璧主義の捨て方ですが、次の二つが挙げられていました。
 
  • 完璧に没頭できる状態を夢見るよりも、嫌な気持ちをそのまま認める。
  • 「未来はけっして確実ではない」という事実を受け入れる。  
 
これは簡単そうで意外と難しいと思います。
実践のために大切なこととして、著者は以下のように言います。
 

「何が起ころうと気にしない」生き方とは、未来が自分の思い通りになることを求めず、したがって物事が期待通りに進むかどうかに一喜一憂しない生き方だ。それは未来を良くしようという努力を否定するものではないし、苦しみや不正をあきらめて受け入れろという意味でもない。そうではなく、未来をコントロールしたいという執着を手放そうということだ。そうすれば不安から解放され、本当に存在する唯一の瞬間を生きられる。つまり、今を生きることが可能になる。

 

今を生きるって、難しいですよね。
今に集中しようとすればするほど未来や過去のことを考えてしまったりしてしまう自分がいます。そういう時、著者は、「自分は今ここにいる」という事実に 気づく こと、不快な感じを受け入れる、ことが大事と言います。不快な感じを受け入れる、というのは腹落ちしました。
 
その上で、今を受け入れつつ前に進むためには、ほんの少しの量を毎日続けることが重要とのことです。
 

「すべての問題を解決済みにする」という達成不可能な目標を諦めよう。そうすれば、人生とは一つひとつの問題に取り組み、それぞれに必要な時間をかけるプロセスであるという事実に気づくはずだ。

 

著者は、今を生きることを本当に理解するためには、自分への質問が大切と言います。著者が重要とする5つの問いを列挙します。
 
  1. 生活や仕事のなかで、 ちょっとした不快に耐えるのがいやで、 楽なほうに逃げている部分はないか?
  2. 達成不可能なほど高い基準で 自分の生産性やパフォーマンスを判断していないか?
  3. ありのままの自分ではなく 「あるべき自分」に縛られているのは、どんな部分だろうか?
  4. まだ自信がないからと、 尻込みしている分野は何か?
  5. もしも行動の結果を気にしなくてよかったら、 どんなふうに日々を過ごしたいか?
 
特に、1は繰り返し自分にしてみたい質問だと思いました。
言い換えると、「この選択は自分を小さくするか、それとも大きくするか?」という問いになるそうです。迷った時はこの判断が人間的成長につながるかどうかで判断するのが良さそうですね。

論語

 論語は座右の書の一つで何度も読み返しているつもりでしたが、全体をくまなく読んだことはありませんでした。今回、現代語訳論語という本で論語の全体を読み直したときに、後半部分で新たな気づきがありました。それは、巻末近くの「季氏第十六」という章に孔子が考える有益なものと有害なものを三つづつ列挙した項を見つけたことです。人間、強調したいことは最後に念押ししたくなるもので、これを俯瞰すると孔子が言いたいことを再認識できると考えました。

 
 例えば季氏第十六」の4はこんな感じです。
 
<読み下し文>
子曰く、益者三友、損者三友。
直を友とし、諒を友とし、多聞を友とするは、益なり。
便辟を友とし、善柔を友とし、便佞を友とするは、損なり。
 
<現代語訳>
先生がいわれた。「有益な友が三種、有害な友が三種ある。人間のまっすぐな〈 直〉なる者、誠実な者、知識のある〈 多聞〉の者を友にするのは有益だ。反対に、まっすぐものを言わないで追従する者、裏表があって誠実でない者、口ばかりうまい者を友にするのは、有害だ。」
 
 このような表現が友、楽しみ、などに分けてしばらく続きます。これを有益なものと有害なものに分けてまとめたものが以下になります。
▪️有益
友:真っ直ぐな者、誠実な者、知識のある者
楽しみ:礼儀と音楽をきちんと行なう、他人の善行や美点をほめる、すぐれた友だちが多い
君子が畏れ敬うこと:天命、人格のすぐれた先輩、聖人の言
 
▪️有害
友:まっすぐものを言わないで追従する者、裏表があって誠実でない者、口ばかりうまい者
楽しみ:度を越して 驕 楽 する、なまけて遊ぶ、酒におぼれる
戒め:(青年期)男女の情欲、(壮年期)人と争い闘うこと、(老年期)財貨を求めすぎる欲
 
 こうして友、楽しみ、畏れと戒めの面で孔子の言葉を俯瞰すると、改めて孔子が、常に自分を高める努力をすること、誠実に生きることが大切である。そのために良い友人を持ち、勉学を楽しむことが重要である、と考えていることが実感できました。
 
 このことを一番よく表していると私が考える孔子の言葉を二つ引用します。
 
先生がいわれた。「学び続け、つねに復習する。そうすれば知識が身につき、いつでも活用できる。実にうれしいことではないか。友人が遠くから自分を思い出して訪ねてきてくれる。実に楽しいことではないか。世の中の人が自分のことをわかってくれず評価してくれなくても、 怒ったりうらんだりしない。それでこそ君子ではないか。[学びて時にこれを習う、また 説 ばしからずや。 朋 あり、遠方より来る、また楽しからずや。人知らずして 慍 みず、また君子ならずや。」
先生がいわれた。「学ぶにおいて、知っているというのは好むには及ばない。学問を好む者は、学問を楽しむ者には及ばない[これを知る者はこれを好む者に 如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず]。」
 今年も約半分が過ぎてしまいましたが、今一度初心に戻り、人生を楽しみたいと思います。