ハカセKの書斎

ある技術者の独り言

アミノ酸の宇宙飛来説について

 生体を構成する必須成分であるアミノ酸には地球上で合成された説と宇宙から飛来したという説があります。最近報道されているはやぶさ2小惑星「りゅうぐう」から持ち帰ったサンプルの分析結果により、アミノ酸23種が発見され、宇宙飛来説の可能性が高まったと思います。

 

 これまでも、隕石からアミノ酸が検出された例はあったものの、途中で付着した可能性を完全に排除できない課題がありました。今回は、地球外の小惑星からアミノ酸が発見されたことに加えて、はやぶさ2小惑星「りゅうぐう」から持ち帰ったサンプルは熱に強い「ケイ酸塩」でてきており、熱に弱いアミノ酸などの有機物を守る役割をしていた、との発表がありました。アミノ酸は宇宙でできて地球に運ばれたという、宇宙飛来説を裏付ける発見だと思います。

 

 ところで、グリシンを除くアミノ酸には、右手と左手の関係のように、互いに鏡に映すと同一の構造になるものが存在し、前者をD体、後者をL体と呼んでいます。この関係を光学異性体と呼びます。光学異性体は化学構造としては同一のため、普通に化学合成すると作り分けることができません。ところが不思議なことに、生体を形成するアミノ酸は全てL体だけで出来ていて、この理由は今だに解明されていません。
 
 ではなぜ生体内のアミノ酸はL体だけなのでしょうか?
 アミノ酸が単純に地球上で合成されたとするとD体とL体が半分ずつ生成する筈ですが、宇宙飛来説にはこれを説明する仮説があります。それが円偏光下での光反応です。円偏光とは、振幅の方向が時間経過で円を描く偏光のことで、星が生成するときに生じる重力場から発生するとされています。つまり、太陽系ができたばかりの時、近くに存在した大質量星の影響で強い円偏光が生成し、その影響下で生成したアミノ酸に光学的な偏りが生じた、というものです。
 
 「りゅうぐう」のサンプル、円偏光の観測、など一見関係ないようなニュースもアミノ酸光学異性体というキーワードで繋がっていますので、関連ニュースは引き続きフォローしていきたいと思います。生命の起源に関わる話にはいつもながら惹きつけられます。