ハカセKの書斎

ある技術者の独り言

論理思考について③

 経営コンサルタントの後 正武氏による「論理思考の本」の読書メモの続きで、これが最後です。

帰納について

 帰納とは、個々の特殊な経験的事実から、一定の共通した要素を探り出し、それによって命題や法則を導き出すことです。ここでは、様々な要素から共通要素を導き出す手順を考えてみます。
 

■単純な帰納

 まず、同質のものから共通項を括り出す単純な帰納について考えます。
 例えば、以下のような事実から、共通の要素を括り出してみます。
 
ギリシャ人で最も長生きした人は93歳で死んだ。
・ローマ人で最も長生きした人は91歳で死んだ。
カルタゴ人で最も長生きした人は95歳で死んだ。
 
 ここから共通した要素を探ると、「人間は100歳までに死ぬ」とい命題は正しいと言えます。しかし、日本で120歳まで生きた人が見つかった場合、この前提は崩れます。その際に、帰納する方法をまとめたのが図1です。この場合は、同質の事実からの共通要素の括り出しなので、述語を「125歳までに死ぬ」とすれば矛盾がなくなります。また、主語を変えて、「古代地中海世界の人は100歳までに死ぬ」とするやり方があります。さらに、「ほどんどの人は100歳ぐらいまでに死ぬ」と定義を曖昧にすることでも一応筋は通ります。

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■複雑な帰納

 次に、異質のものから共通項を括り出す複雑な帰納について考えます。この場合、図に示した四則演算で考える手法が有効です。例えば、会社の売上拡大施策を考える場合、いきなり全体を考えるのではなく、各営業拠点の売上の総計で考えると漏れがなく全体の売上を見積もることができます。その他、引き算、掛け算、割り算などを想定して全体を考えると分解しやすくなります。
 

■おわりに

 論理思考は技術者にとっては非常に重要なスキルです。研究開発の過程はもちろん、文章作成やプレゼンテーション、スピーチなどはいずれも論理思考がベースになっています。一方で、論理思考は英語やスポーツと同じで使わないと錆び付いてしまいますので、日々の鍛錬が重要です。本書は論理思考を基礎から解説したうえで演習問題も充実しており、論理思考の入門書としては良書だと思いました。