ハカセKの書斎

ある技術者の独り言

【読書メモ】はじめての社内起業

■はじめに

 起業に関する本は多くありますが、社内に特化した本は珍しく、約4年前に購入した本です。社内起業の進め方を「疑似体験」できるような形で、考え方から注意点まで丁寧にまとめた本という印象。いわゆる教科書的な説明でなく、具体的な事例を交えて説明されているので、自分ごととして想像しやすいです。突然、会社で新事業の立案を任されることになった方にはマニュアル的な本になるでしょう。実は私も以前、全く別の職種から新事業企画担当になったことがありましたが、その際、一般的なマーケティング本に加えて本書を読みながら手探りで仕事を進めた経験があります。
 

■本の内容(「BOOK」データベースより

書名:はじめての社内起業 「考え方・動き方・通し方」実践ノウハウ
概要:2015年7月発売
 「新規事業は雲をつかむ感じ。何から始めればいいのか…」「アイデアが浮かばない。『自由に考えろ』と言うけど…」「孤立無援。『敵』もいる。社内でどう動いたらいい?」etc.会社員だからこそできる「起業」がある!企業内起業家3,000名を育てた、元リクルート新規事業開発室マネジャーによるリアルメソッド!
 
著者情報:
 石川 明(いしかわ あきら)
 新規事業インキュベータ石川明事務所代表。早稲田大学ビジネススクール研究センター特別研究員。SBI大学院大学MBAコース客員准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
 
出版社:ユーキャン学び出版
 

■内容と感想

 事業会社での社内起業の場合、大きなハードルとなるのが上層部との調整です。これに関しては、事前準備をした上で、検討することの承認を得て、検討範囲の承認を得る、と段階的に話をすすめる重要性が強調されています。
 
何か具体的な検討テーマが指示されていない場合は、起案する前に、「どんな範囲で検討を進めていくべきか」を確認しておきましょう。  「既存の枠組みにしばられず、自由に」と指示する役員の中にも、漠然と「○○あたりにビジネスチャンスがありそうだ」とか「わが社では××はやるべきではない」というイメージを持っている ものです。
 
把握した情報をもとに設定したガイドラインは、次のようにできるだけ言葉にして経営陣と共有し、確認しておきましょう。【例】高齢者マーケットで、少人数で運営できて、3年以内に黒字化を目指せる事業(フェアウェイ)。だが、食品や医薬品は扱わない(OBゾーン)。
 
起案をした時、経営者から「そもそも検討範囲がおかしい」などという評価を受けてしまっては目も当てられませんので、それを避けるには、当たりをつけた段階で一度経営者の同意を得ることをおすすめします。
 
 また、根回しの進め方も具体的に説明されています。新事業企画を任された際、提案の中身に意識が行き過ぎ、調整を疎かにしていた私に根回しの重要性を思い起こさせてくれました。
 
事業内容を検討する作業と並行して、しかるべき人に少しずつ「根回し」をしておきましょう。小出しに考えを伝え、いわゆる「ジャブ打ち」で距離を測り、イメージをすり合わせながら案を磨いていくことが有効です。 そして最終的に、「関係者の皆さんと相談しながら検討してきました」という形で起案の場に持ち込めるのが、最善の状態です。
 
そのためには、「自分の考えた案を聞いてもらい説得する」のではなく「相談を持ちかける」スタンスで臨むのが有効 です。よい案をいっしょに考えてもらう、という形をつくることによって、キーマンたちと「一蓮托生」の関係づくりができます。
 
 本書では、「事業とは『不』の解消である」と定義しています。ここでいう「不」とは不便、不満などの顧客の困りごとです。そして、これを解決することこそが、事業の本質と著者は言います。この「不」の分析を通じて新事業を具体化する方法を国語・算数・理科・社会になぞらえて説明されています。
 
第1段階は、「国語の時間」。「どんな人(法人)」が「どんな気持ち」で、どんな「不」を抱えているのか。その人(法人)の姿がリアルに思い浮かぶようにします。  第2段階は、その「不」の大きさを推計する「算数の時間」。「不」の大きさを、「抱えている人(法人)の数」×「抱える頻度」×「感じる深さ」の掛け算で推計します。  第3段階は「理科の時間」。その「不」が生じている理由を分析します。 最後の第4段階は「社会の時間」。なぜ世の中でそのような「不」が解消されずに残っているのか、という社会的背景の分析をします。
 
 これについては私なりに図化してみました(図1)。また、PEST分析、STP分析の考え方も、一般的な説明に加え、「不」を解消する事業案として適切かどうか検証する手段として説明されており、社内起業を想定した場合、ツールとしてどう使いこなすかという視点での理解が進みました。PESTは図2、STPは図3にエッセンスをまとめました。

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図1. ビジネスチャンスを探すステップ

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図2. PEST分析

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図3. アイディアをプランにする戦略の立て方